日々の治療の中で気づいたこと
私自身も3人の子どもがいるので、どうすればこの子たちを虫歯から守れるのか、地域のお子さんのお口を健やかに保てるかと考えながら、治療を行っています。
そんな治療の中で気づいたことがあります。それはお子さんの歯を守るには、その子のケアだけでは足りません。まずはお母さん、お父さん自身が歯科知識を身に着けて、積極的に予防歯科を実践することこそがお子さんの歯を守ることにつながるのです。 お子さんの歯を守るコツは、親子で予防に取り組むことだと私たちは考えています。
予防は親子で取り組むことが効果的な理由
産まれたばかりの赤ちゃんの口腔内には、虫歯菌は存在しません。しかし、お父さん、お母さんがが使用したスプーンや箸を使ったり、周りの大人が口にしたものを与えたりすることで唾液から感染してしまいます。なかでも、スキンシップの一環でするお子さんとのキスが感染経路になっていることもあるのです。
○母親のミュータンス菌と感染率
グラフでもわかるように、お母さんの虫歯菌が多いほど、お子さんの感染率も高まってしまいます。
虫歯は遺伝すると考えている人も少なくないようですが、実際はご両親が歯の健康管理を怠った結果、お子さんに感染しやすい環境を与えてしまったからというケースが少なくありません。まずは虫歯になりにくい環境をつくっていくことが大切です。
残念ながら、完全に感染を防ぐことは不可能でしょう。しかし、少なくとも3歳までは、虫歯菌や歯周病菌に触れるような機会を作らないことで、発症のリスクを抑えることは充分可能です。
そのためにはまず、お父さんやお母さんがご自身の口腔内に目を向けることから始めましょう。虫歯や歯周病の治療をし、適切な歯の磨き方を知ることで細菌の繁殖を抑制します。また、日々の食事や間食、嗜好品などの生活習慣を見直すことも重要です。
歯科医院とは、治療のために訪れるのではなく、健康な状態を維持するために通う場所でなければなりません。ご両親が定期的なメンテナンスを習慣にすることができれば、お子さんの歯の健康も維持できる可能性がぐっと高まります。そのため、早い時期から「親子」で予防歯科に取り組む姿勢が大事なのです。
虫歯へのなりやすさは3歳までに決まる!?
お父さん、お母さんからお子さんに虫歯菌を移してしまうという話をしましたが、お子さんがとくに感染しやすい時期は1歳半から3歳くらいです。 虫歯体質になるかどうかはこの時期に決まると言われており、感染時期を遅らせることができればできるほど、生涯にわたって虫歯になりにくくなります。
だからこそ、小さい頃から親子で虫歯予防することを大切にしてほしいと思います。
予防のための歯医者さんは怖くありません
いままでの歯医者は痛くなった箇所を削る場所でした。だから怖い、痛い、行きたくないというイメージがあると思います。しかし、予防のために通院する歯医者さんは、ケアが中心なので、痛い、怖い治療はありません。
だから美容院で髪をケアするように、気軽に定期的なケアに通っていただければと思います。
予防歯科のメリット
定期的に予防歯科を受診し、歯石除去やプロによるクリーニング、正しい歯磨き方法の指導を受けているご両親のお子さんは、定期健診を受けていない家庭と比較すると、明らかに感染するリスクが下がると言われています。
○お母さんが定期的に歯科医院でケアした場合のお子さんの感染率
お母さんが定期的なケアを行うことで、お子さんの感染率がグッと低くなることがグラフからもわかります。 安定期を迎えた妊娠6ヶ月頃に受診し、お母さんの口内環境を整えておくことで母子感染の確率が低くなるのです。
完全に、虫歯菌の感染を阻止することは困難だと言いましたが、感染が遅れれば遅いほど虫歯に罹るリスクも減ります。そのためには、お子さんの免疫機能が安定する3歳頃までは特に注意し、定期健診でケアしていくことが大切です。 お子さんが嫌がらずに予防歯科を受診できるよう、乳歯が生える前から歯ブラシに慣れさせたり、口の中を触ったりする習慣をつけることもポイントのひとつです。
予防歯科ではこんなことを行います
乳歯が生え始める前
ここでの大きな目的は、【歯ブラシに慣れさせる】【赤ちゃんの口の中を観察する習慣をつける】と言うことです。それと同時に、保護者がご自身の口腔内トラブルと向き合い、改善することがお子さんの歯の健康を守るためにも重要です。
生後6ヶ月から1歳頃
個人差はありますが、この頃から歯が生え始めます。また、離乳食の開始とともに飲食から摂取した糖分がミュータンス菌を定着させ、虫歯のリスクが高まります。 この時期を目安に歯科医院を訪れ、離乳食の与え方や歯磨き指導を受けましょう。
3歳頃までにすべきこと
虫歯ができてから歯医者に行くのではなく、早い時期から歯科医院に慣れておくことも大切です。そのためには、家族全員で予防歯科に取り組む姿勢が重要でしょう。 虫歯や歯並びのチェック、歯磨き指導、フッ素塗布などの予防処置を定期的に受けることで歯の健康が保たれます。
3歳までに、このような正しいケアが行われていた場合、その後の虫歯や歯周病に罹るリスクが低いと言われています。
最後に
お子さんの歯の健康を守りたい、虫歯にさせたくないと思うことは親なら当然の願いです。そのためには、お父さんやお母さんが予防歯科の重要性を理解し、ご自身の歯の健康管理を見直すことから始めましょう。