力から歯を守る
力によって歯は割れてしまう
歯を失う原因は大きく2つあります。1つ目は虫歯や歯周病など「細菌」によるものです。そして、2つ目は「力(ちから)」です。
歯に力が加えられると最初は歯の根元付近がくさび状にえぐれ、冷たいもの・甘いものにしみるなど知覚過敏の症状が出ます。その症状は時間が経てば落ち着くものなので受診することなく放置してしまうと、歯を支える根本がさらにえぐれて細くなり最終的には歯が割れてしまうのです。
「力」とは?
歯を壊すほどの力の正体は「歯ぎしり」や「噛みしめ(食いしばり)」です。
意識下で行われる力(食事、ガムを噛む、など)で歯を割る人はめったにいません。しかし、歯ぎしり・噛みしめの多くは自覚していない間に行われ、歯を壊す程の大きな力がかかっています。
虫歯や歯周病で歯を失わないために毎日の歯磨きと定期的な歯科検診が必要であることを呼びかけられていますが、本当の意味で歯を失わないようにするには歯ぎしり・噛みしめによる力も考える必要があるのです。
2.歯ぎしりの実態
歯ぎしりや噛み締めはしていないから大丈夫、と安心した方もいると思います。
しかし、日本人の90%が歯ぎしりや噛み締めをしていると言われ、それを自覚している方はほとんどいないのです。
それは、夜の就寝中に無意識的に行われていることだからです。
ギリギリと音がする程の歯ぎしりをしない限り、一緒に寝ている家族も気が付きません。
就寝中の歯ぎしり・噛みしめ セルフチェック
- 起床時、こめかみ辺りに頭痛がある
- 起床時、肩こりがある
- 起床時、あごの関節がだるい・疲れている
- 舌の側面に歯の跡のようなデコボコがある
- 下あごの内側・上あごの真ん中・歯茎に硬いコブのようなものがある
→「骨隆起」と呼ばれるものです。歯ぎしり・噛みしめによる力が刺激となり、あごの骨が盛り上がってしまっている状態です。ほとんどの場合は処置をせず経過観察となりますが、ものが当たって痛いなど生活に支障が出る程に大きくなると切除手術をすることもあります。
セルフチェックで一つでも当てはまることがあれば、就寝中に歯ぎしり・噛みしめをしている可能性は大きいです。
「力」をコントロールして歯を守る
就寝中の歯ぎしり・噛みしめを発見したとしても、残念ながら現段階ではそれを止めることはできません。しかし、歯ぎしり・噛みしめを“コントロール”することはできます。
コントロールするために使うのが「マウスピース」です。
就寝中にマウスピースを使うことで歯と歯の間に一層のクッションができ、歯ぎしり・噛みしめの力から歯を守ります。
4.マウスピースのおすすめ
マウスピースは厚さ1mmの薄いプラスチック製で、患者さんの歯型を採って一つひとつオーダーメイドでお作りしています。作製日数は1週間ほどです。マウスピースは上あご・下あごの両方装着する必要はなく、上あごのみの装着で効果があります。
費用は保険適用・3割負担の方で約3000円です。1回つくると平均1年間使い続けることができます。
マウスピースのお手入れ方法
- 使用後に水洗いし風通しの良い場所に保管してください
- お湯をかけないでください(プラスチック製のため変形します)
- 歯磨き粉で磨くと傷がつくことがあります
どうしても汚れが気になる時は、マウスピース用の洗浄剤(市販品)を使ってください
稀に装着時の違和感が強くて眠れなくなってしまう方もいらっしゃいます。マウスピースをわずかに削って調整することで違和感を弱めることができますので、お気軽にご相談ください。
また、歯の治療をした時、歯並びに変化があった時、歯が成長した時、などにも装着時に違和感が出ることがあります。こちらの場合にもお気軽にご相談ください。